分数の形になっている漸化式の解き方【基本分数型】

(注意) 【~型】はパターンを意識するためであり,当サイト独自の表現です。答案に書かないように。

  分数の形の漸化式の中でも最も頻出である【基本分数型】について扱います。

このページの目標
  • 【基本分数型】の形を知る
  • 【基本分数型】の解法を知る
  • 【基本分数型】の漸化式が「解ける!」

【基本分数型】$a_{n+1}=\displaystyle\frac{pa_n}{qa_n+r}$

(例) $a_{n+1}=\displaystyle\frac{3a_n}{2a_n-1}$

【基本分数型】の解法

【基本分数型】の漸化式は,
$a_n\not=0$ を確認後,
逆数をとって $\displaystyle\frac{1}{a_n}=b_n$ とおくことで別の型に帰着します。

(参考)

$a_{n+1}=\displaystyle\frac{pa_n}{qa_n+r}$

逆数をとると

$\displaystyle\frac{1}{a_{n+1}}=\displaystyle\frac{qa_n+r}{pa_n}$

$\displaystyle\frac{1}{a_{n+1}}=\displaystyle\frac{q}{p}+\displaystyle\frac{r}{pa_n}$

よって,

$\displaystyle\frac{1}{a_{n+1}}=\displaystyle\frac{r}{p}・\displaystyle\frac{1}{a_n}+\displaystyle\frac{q}{p}$

$\displaystyle\frac{1}{a_n}=b_n$ とおくと

$b_{n+1}=\displaystyle\frac{r}{p}b_n+\displaystyle\frac{q}{p}$

覚えておく必要はないけど,

$\displaystyle\frac{r}{p}=1$ すなわち $p=r$ のとき【等差型】

$\displaystyle\frac{r}{p}\not=1$ すなわち $p\not=r$ のとき【特殊解型】

となります。

【基本分数型】の注意①

【基本分数型】は分子が $a_n$ の項 1 つのみ

$a_{n+1}=\displaystyle\frac{2a_n+1}{3a_n-1}$ 【一般分数型】

のような漸化式は逆数をとっても意味がありません。このパターンは別記事で扱いますが難易度が高く,ほぼ誘導が入ります。

【基本分数型】の注意②

分母を払った

$ra_{n+1}=pa_n-qa_{n+1}a_n$

という形で出題される場合もあります。
しかし,漸化式(2項間)はとにかく 「$a_{n+1}=~$」 に直す癖をつけておけば問題ありません。
実際に直してみると,$a_{n+1}$ を左辺にまとめて,

$(qa_n+r)a_{n+1}=pa_n$

よって,$qa_n+r\not=0$ のとき

$a_{n+1}=\displaystyle\frac{pa_n}{qa_n+r}$ 【基本分数型】

【基本分数型】の漸化式の問題と解答

実際に,【基本分数型】の漸化式を解いてみましょう。

問題

次の条件によって定められる数列 $\left\{a_n\right\}$ の一般項を求めよ。
  $a_1=\displaystyle\frac{1}{4}$,$a_{n+1}=\displaystyle\frac{a_n}{3a_n+1}$

解説(授業)

$a_{n+1}=\displaystyle\frac{a_n}{3a_n+1}$

まず,漸化式を見て【基本分数型】であることに瞬時に気付いてください。これがスタートラインです。次に,【基本分数型】の解法を言えるようにしましょう。言えますか?

$a_{n+1}=\displaystyle\frac{pa_n}{qa_n+r}$【基本分数型】は

$a_n\not=0$ を確認
後,
逆数をとって $\displaystyle\frac{1}{a_n}=b_n$ とおく!

確実に言えるようにしてくださいね。とにかく逆数をとることがポイントとなりますが,逆数をとったあとの分母が $0$ になるとマズイので,$a_n\not=0$ を確認する必要が生じます。

と言っても,次の項目の答案にあるように「初項と漸化式から $a_n\not=0$」と書いておけば十分です。

詳しく証明する場合は次の(参考)の通りです。
背理法を用います。
(背理法:成り立たないことを仮定して矛盾を導く)

$a_n=0$ と仮定すると,漸化式から,

$a_{n}$ $=\displaystyle\frac{a_{n-1}}{3a_{n-1}+1}$ $=0$

よって,$a_{n-1}=0$
[分数が $0$ ⇒ 分子が $0$]

これを繰り返して,

$a_n=a_{n-1}=a_{n-2}=・・・=$ $a_1=0$

となり,$a_1=\displaystyle\frac{1}{4}$ に反する

よって,$a_n\not=0$

さて,漸化式の両辺の逆数をとると,次のようになります。

$\displaystyle\frac{1}{a_{n+1}}=\displaystyle\frac{3a_n+1}{a_n}$

逆数をとることによって,右辺をバラバラにすることができて,

$\displaystyle\frac{1}{a_{n+1}}=3+\displaystyle\frac{1}{a_n}$

ここで,$\displaystyle\frac{1}{a_n}=b_n$ とおく

$b_{n+1}$ $=$ $b_n$ $+3$
となりますね。
さて,この漸化式を見てどの型か分かりますか?
これは見て瞬時に気付かなくてはなりません。
等差型】$a_{n+1}=a_n+d$
となっていますね。

等差型】【等比型】【階差型】は公式から瞬時に解く!


等差数列の一般項
は「初項」「公差」から求める!

$\left\{b_n\right\}$ の「初項」「公差」を確認すれば $b_n$ が求まります。
初項 $b_1=\displaystyle\frac{1}{a_1}=4$
公差 $3$ の等差数列より,
$b_n$ $=$ $4$ $+$ $(n-1)\cdot3$
よって,$b_n=3n+1$
あとは,逆数をとり直せば $a_n$ が求まりますね。
$\displaystyle\frac{1}{a_n}=b_n$ より $a_n=\displaystyle\frac{1}{b_n}$ であるから,

$a_n=\displaystyle\frac{1}{3n+1}$ (答)

【基本分数型】は逆数とって $\displaystyle\frac{1}{a_n}=b_n$ とおくことさえ知っていれば難しくありません。しっかりパターン暗記しておきましょう。
ちなみに,$a_n\not=0$ の確認についてですが,問題文に誘導で「$\displaystyle\frac{1}{a_n}=b_n$ とおいて~」などと書かれている場合は,確認不要です。自分でおく場合のみ必要となることも一応知っておいてください。

答案

$a_{n+1}=\displaystyle\frac{a_n}{3a_n+1}$

初項と漸化式から $a_n\not=0$ より,

漸化式の両辺の逆数とって

$\displaystyle\frac{1}{a_{n+1}}=\displaystyle\frac{3a_n+1}{a_n}$

よって,

$\displaystyle\frac{1}{a_{n+1}}=3+\displaystyle\frac{1}{a_n}$

$\displaystyle\frac{1}{a_n}=b_n$ とおくと,

$b_{n+1}$ $=$ $b_n$ $+3$ 【等差型

$\left\{b_n\right\}$ は,

初項 $b_1=\displaystyle\frac{1}{a_1}=4$

公差 $3$ の等差数列より、

$b_n$ $=$ $4$ $+$ $(n-1)\cdot3$

よって,$b_n=3n+1$

$\displaystyle\frac{1}{a_n}=b_n$ より $a_n=\displaystyle\frac{1}{b_n}$ であるから,

$a_n=\displaystyle\frac{1}{3n+1}$ (答)

【基本分数型】の漸化式がこれで「解ける!」

【基本分数型】$a_{n+1}=\displaystyle\frac{pa_n}{qa_n+r}$

【基本分数型】漸化式の解法
  • 逆数とって,$\displaystyle\frac{1}{a_n}=b_n$ とおく!
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