隣接3項間型の漸化式の解き方

(注意)【~型】はパターンを意識するためであり,当サイト独自の表現です。答案などに書かないようにしてください。

ここでは,隣接3項間型漸化式について扱います。難易度はかなり高く,習得を諦めてしまう人も少なくない問題です。しかし,入試においては重要で,大学のレベルが上がるにつれて重要度は増す。特に,理系の場合は習得が必須です。繰り返し解いて,ぜひ習得を目指しましょう。

このページの目標
  • 【隣接3項間型】漸化式の解法3ステップを知る
  • 【隣接3項間型】漸化式が「解ける!」

【隣接3項間型】$a_{n+2}+pa_{n+1}+qa_n=0$

(例) $a_{n+2}+6a_{n+1}+5a_n=0$
(例) $a_{n+2}-4a_{n+1}+4a_n=0$

【隣接3項間型】漸化式の解法

この型の漸化式は解き方が決まっているため,パターンとして暗記してしまうのが良い。しかし,難易度が高く解答も長いため,すべて覚えようとすると習得にかなりの時間を要します。
ポイントは,全体を丸暗記するのではなく,暗記しておかないと発想しにくい部分のみを覚え,他はその場で考えることです。覚えるべき部分は以下で,詳細は問題の解説で説明しますが,以下の①~③を流れの軸として覚えることが,隣接3項間型漸化式習得の近道です!

① $a_{n+2}→x^2,a_{n+1}→x,a_n→1$ とした特性方程式
 $x^2+px+q=0$ の解 $\alpha$,$\beta$ を求める
 (①は答案に書かない)

$\begin{cases}a_{n+2}-\alpha a_{n+1}=\beta(a_{n+1}-\alpha a_n)\\a_{n+2}-\beta a_{n+1}=\alpha(a_{n+1}-\beta a_n) \end{cases}$
  と変形する。

③ $\left\{a_{n+1}-\alpha a_n\right\}$,$\left\{a_{n+1}-\beta a_n\right\}$を,
  それぞれ【等比型】として見る。

【隣接3項間型】の問題と解説

問題

 $n$ を自然数とする。次の条件によって定義される数列 $\left\{a_n\right\}$ の一般項を求めよ。

(1) $a_1=0$,$a_2=1$,

  $a_{n+2}-a_{n+1}-6a_n=0$

(2) $a_1=1$,$a_2=4$,
  $a_{n+2}-6a_{n+1}+9a_n=0$

解説(授業)

(1) $a_1=0,a_2=1$,
  $a_{n+2}-a_{n+1}-6a_n=0$

隣接3項間型漸化式の特性方程式

まず $x^2-x-6=0$ を解く。【暗記1
$x=3,-2$

この $2$ 解を
$a_{n+2}-\alpha a_{n+1}=\beta(a_{n+1}-\alpha a_n)$【暗記2
に代入することで,漸化式を変形します。(代入する値を入れ替えて $2$ 式作成)

隣接3項間型漸化式の変形式
特殊解代入後の式

①,②から
$\left\{a_{n+1}-3a_n\right\}$,$\left\{a_{n+1}+2a_n\right\}$
の一般項を【等比型】として求める。【暗記3

ここまでが,暗記を含めて覚える部分になります。
以降は,暗記ではなく考えて解き進めます。

まず①を【等比型】と見て,$\left\{a_{n+1}-3a_n\right\}$ の一般項 $a_{n+1}-3a_n$ を求めます。
$a_{n+2}-3a_{n+1}$ $=$ $-2$$(a_{n+1}-3a_n)$ 【等比型】・・・①

①の式を等比型と見る

①より $\left\{a_{n+1}-3a_n\right\}$
初項 $a_2-3a_1=1$公比 $-2$ の等比数列
よって $a_{n+1}-3a_n$ $=$ $1$ $\cdot$ $(-2)^{n-1}$ 
∴ $a_{n+1}-3a_n$ $=$ $(-2)^{n-1}$ ・・・ ③

次に②を【等比型】と見て,$\left\{a_{n+1}+2a_n\right\}$ の一般項 $a_{n+1}+2a_n$ を求めます。
$a_{n+2}+2a_{n+1}$ $=$ $3$$(a_{n+1}+2a_n)$ 【等比型】・・・②

②の式を等比型と見る

②より $\left\{a_{n+1}+2a_n\right\}$ は,
初項 $a_2+2a_1=1$公比 $3$ の等比数列
よって $a_{n+1}+2a_n$ $=$ $1$ $\cdot$ $3^{n-1}$
∴ $a_{n+1}+2a_n$ $=$ $3^{n-1}$ ・・・④

$\begin{cases}a_{n+1}-3a_n=(-2)^{n-1} \enspace \cdots \text{③}\\a_{n+1}+2a_n=3^{n-1}\enspace \cdots \text{④}\end{cases}$

③と④の差をとれば,$a_{n+1}$ が消え,$a_n$ が求まります。
$a_n$ の係数が正となるように,④ $-$ ③とするのが良さそうですね。

④ $-$ ③とすると
$5a_n=3^{n-1}-(-2)^{n-1}$

よって,$5$ で割って

$a_n=\displaystyle\frac{1}{5}\left\{3^{n-1}-(-2)^{n-1}\right\}$ (答)

(2) $a_1=1,a_2=4$,
  $a_{n+2}-6a_{n+1}+9a_n=0$

隣接3項間特性方程式

$x^2-6x+9=0$ を解くと,
$(x-3)^2=0$
$x=3$ (重解)

重解となるとき,少し困ったことが起きます。ひとまず (1) と同じように進めてみましょう。
$\alpha=3$$\beta=3$ として,
$a_{n+2}-\alpha a_{n+1}=\beta(a_{n+1}-\alpha a_n)$
に代入すると,

特殊解を代入した式

(1) は代入する値を入れ替えてもう $1$ つの式を作りましたが,重解の場合,値を入れ替えても同じ式になってしまい,$2$ つ目の式を立てることができません。つまり,この①のみで $a_n$ を求めなくてはならないのです。(1) と同様に,【等比型】と見てまず $\left\{a_{n+1}-3a_n\right\}$ の一般項を求めましょう。

漸化式から等比型と見る

①より $\left\{a_{n+1}-3a_n\right\}$ は,
初項 $a_2-3a_1=1$公比 $3$ の等比数列なので,
$a_{n+1}-3a_n$ $=$ $1$ $\cdot$ $3^{n-1}$ $=3^{n-1}$

$a_{n+1}=~$ の形にすると,
$a_{n+1}=3a_n+3^{n-1}$
となり,
【$○^n$ 型】$a_{n+1}=pa_n+q^n$
が姿を現しますね。

この型は,$q^{n+1}$ で割って,$\displaystyle\frac{a_n}{q^{n}}=b_n$ とおくでしたね。忘れている場合は以下の記事を確認しておこう。

$a_{n+1}=3a_n+3^{n-1}$【$○^n$ 型】

両辺を $3^{n+1}$ で割って
$\displaystyle\frac{a_{n+1}}{3^{n+1}}=\displaystyle\frac{3a_n}{3^{n+1}}+\displaystyle\frac{3^{n-1}}{3^{n+1}}$

整理して,
$\displaystyle\frac{a_{n+1}}{3^{n+1}}=\displaystyle\frac{a_n}{3^{n}}+\displaystyle\frac{1}{9}$

$\displaystyle\frac{a_n}{3^{n}}=b_n$ とおくと,

$b_{n+1}$ $=$ $b_n$ $+\displaystyle\frac{1}{9}$
これは,【等差型】なので,等差数列の一般項の公式により,瞬時に求めましょう。
等差数列の一般項は「初項」と「公差」が必要でした。

$\left\{b_n\right\}$ は,
初項 $b_1=\displaystyle\frac{a_1}{3^{1}}=\displaystyle\frac{1}{3}$
公差 $\displaystyle\frac{1}{9}$ の等差数列より,

$b_n$ $=$ $\displaystyle\frac{1}{3}$ $+$ $(n-1)\cdot\displaystyle\frac{1}{9}$

  $=\displaystyle\frac{1}{9}n+\displaystyle\frac{2}{9}$

  $=(n+2)\cdot\displaystyle\frac{1}{9}$

あとは,$\displaystyle\frac{a_n}{3^{n}}=b_n$ から $a_n=3^nb_n$ として $a_n$ を求めましょう。
$a_n=3^n \cdot \left\{(n+2)\cdot\displaystyle\frac{1}{9}\right\}$
 $=(n+2)\cdot3^{n-2}$ (答)

なんとか解けましたね。(1)が基本で,$2$ 式を連立して解きますが,最初の $2$ 次方程式の解が重解となる場合は,$1$ つの式から求めるため,面倒になります。ちなみに,(1) も (2) と同じ方法,すなわち $1$ つの式から求めることも可能ですが,$2$ 式作ることができる場合は,連立して求めた方が簡単なので,重解かそうでないかで違う手順で解くのが無難でしょう。

解説を入れながらだと長くなりますが,実際の解答はシンプルです。
上のことを理解しながら,自力で次の答案が書けるようにしっかり練習しましょう。

答案

(1) $a_{n+2}-a_{n+1}-6a_n=0$

$\begin{cases}a_{n+2}-3a_{n+1}\\    =-2(a_{n+1}-3a_n)\cdots\text{①}\\ \\a_{n+2}+2a_{n+1}\\    =3(a_{n+1}+2a_n)\cdots\text{②}\end{cases}$

$\begin{cases}a_2-3a_1=1\\a_2+2a_1=1\end{cases}$ [初項の確認]

より,

$\begin{cases}a_{n+1}-3a_n=(-2)^{n-1}・・・③\\ \\a_{n+1}+2a_n=3^{n-1} ・・・④\end{cases}$

④ $-$ ③とすると

$5a_n=3^{n-1}-(-2)^{n-1}$

よって,

$a_n=\displaystyle\frac{1}{5}\left\{3^{n-1}-(-2)^{n-1}\right\}$ (答)

(2) $a_{n+2}-6a_{n+1}+9a_n=0$

$a_{n+2}-3a_{n+1}$ $=$ $3$ $(a_{n+1}-3a_n)$・・・①

①より $\left\{a_{n+1}-3a_n\right\}$ は,

初項 $a_2-3a_1=1$公比 $3$ の等比数列である。

よって,
$a_{n+1}-3a_n$ $=$ $1$ $・$ $3^{n-1}$ $=3^{n-1}$

したがって,
$a_{n+1}=3a_n+3^{n-1}$ 【$○^n$ 型】

両辺を $3^{n+1}$ で割って

$\displaystyle\frac{a_{n+1}}{3^{n+1}}=\displaystyle\frac{3a_n}{3^{n+1}}+\displaystyle\frac{3^{n-1}}{3^{n+1}}$

よって,

$\displaystyle\frac{a_{n+1}}{3^{n+1}}=\displaystyle\frac{a_n}{3^{n}}+\displaystyle\frac{1}{9}$

$\displaystyle\frac{a_n}{3^{n}}=b_n$ とおくと,

$b_{n+1}$ $=$ $b_n$ $+\displaystyle\frac{1}{9}$ 【等差型】

$\left\{b_n\right\}$ は,

初項 $b_1=\displaystyle\frac{a_1}{3^{1}}=\displaystyle\frac{1}{3}$

公差 $\displaystyle\frac{1}{9}$ の等差数列より,

$b_n$ $=$ $\displaystyle\frac{1}{3}$ $+$ $(n-1)\cdot\displaystyle\frac{1}{9}$

  $=\displaystyle\frac{1}{9}n+\displaystyle\frac{2}{9}$

  $=(n+2)\cdot\displaystyle\frac{1}{9}$

$\displaystyle\frac{a_n}{3^{n}}=b_n$ より $a_n=3^nb_n$ であるから,

$a_n=(n+2)\cdot3^{n-2}$ (答)

【隣接3項間型】漸化式がこれで「解ける!」

【隣接3項間型】$a_{n+2}+pa_{n+1}+qa_n=0$

【隣接3項間型】漸化式の解法(3ステップ)
  • $x^2+px+q=0$ の解 $\alpha$,$\beta$ を求め
  • $\begin{cases}a_{n+2}-\alpha a_{n+1}=\beta(a_{n+1}-\alpha a_n)\\a_{n+2}-\beta a_{n+1}=\alpha(a_{n+1}-\beta a_n) \end{cases}$
    と変形し
  • $\left\{a_{n+1}-\alpha a_n\right\}$,$\left\{a_{n+1}-\beta a_n\right\}$
    【等比型】で解く!
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