相加平均・相乗平均による最大値,最小値の求め方

$○+\displaystyle\frac{\text{定数}}{ ○ }$ の最大値,最小値は$(\text{相加平均})≧(\text{相乗平均})$

相加平均と相乗平均の大小関係

$a>0,b>0\text{ のとき}$
$a+b≧2\sqrt{ab}$
$\text{等号は }a=b\text{ のとき成り立つ}$

基本例題

$x>0$ のとき,$x+\displaystyle\frac{ 4 }{ x }$ の最小値を求めよ。

例題の解答

$x>0$,$\displaystyle\frac{4}{x}>0$ より,

$(\text{相加平均})≧(\text{相乗平均})$ から
$x+\displaystyle\frac{ 4 }{ x }≧2\sqrt{ x\cdot\displaystyle\frac{ 4 }{ x } }$$=4$

等号は $x=\displaystyle\frac{ 4 }{ x }$ すなわち $x=2$ のとき成り立つ

よって,$x+\displaystyle\frac{ 4 }{ x }$ の最小値は $4$ (答)

例題の解説(相加平均・相乗平均の大小関係の使い方)

 慣れていれば簡単な問題だが,慣れていない人からすると苦戦するだろう。どう考えて,どう書いていくのか流れに沿って説明する。

 まず,$○+\displaystyle\frac{ \text{定数} }{ ○ }$ という形の式を見て,$(\text{相加平均})≧(\text{相乗平均})$ を使う問題だと気付く必要がある。

次に,$(\text{相加平均})≧(\text{相乗平均})$ を使うと決めたあと,どのように記述していけばよいかだが,以下の①~③の流れを意識しよう;

公式を適用する 2 つの項が正であることをいう

今回は $x$ と $\displaystyle\frac{ 4 }{ x }$ に適用するので,$x$ と $\displaystyle\frac{ 4 }{ x }$ が正であることをいう。

これを言わないと $(\text{相加平均})≧(\text{相乗平均})$ は使えない。
公式を適用した不等式を書く

$x+\displaystyle\frac{ 4 }{ x }≧2\sqrt{ x\cdot\displaystyle\frac{ 4 }{ x } }$

右辺を計算することで,$x+\displaystyle\frac{ 4 }{ x }≧4$ を得る。
等号が成り立つ条件を書く

 最大,最小問題でここを省略すると必ず減点されるので,注意。

等号は,公式を適用した 2 つの項が等しいときのなので,今回は $x=\displaystyle\frac{ 4 }{ x }$ のとき。これを解くと,$$x^{2}=4$$ $$x=\pm2$$ $$x>0\text{ より }$$ $$x=2$$


以上から,$x+\displaystyle\frac{ 4 }{ x }$ は $x=2$ のとき最小値 $4$ をとることが分かる。

なぜ,等号が成り立つ条件を言わなくてはならないのか。

②の時点で $x+\displaystyle\frac{4}{x}≧4$ が得られ,最小値 $4$ と答えても良さそうに見える。

少しややこしい話になるが「$4$ 以上」であっても「最小値が $4$ 」とは言い切れない。

例えば $x$ を実数として,$x^{2}≧-1$ という不等式が成り立つが,$x^{2}$ の最小値は $-1$ だろうか。これが間違いなのは分かるだろう。これは $x^{2}=-1$ を満たす $x$ が存在しないからである。

$x^{2}≧0$ という不等式であれば,$x=0$ のときに等号が成り立つので,最小値 $0$ がいえる。

結局,$x+\displaystyle\frac{ 4 }{ x }≧4$ だけでは最小値は $5$ かもしれないし $100$ かもしれない(「最小値が $100$」 だとしても 「$4$ 以上」 は成り立つ)。$x+\displaystyle\frac{ 4 }{ x }=4$ となる $x$ が存在することが言えて,初めて最小値 $4$ が確定する。

この部分の理解が曖昧な人が多いが,③の必要性についてしっかり理解しておこう。

問題(相加平均・相乗平均の大小関係)

(1) $\left(x+\displaystyle\frac{1}{x}\right)\left(2x+\displaystyle\frac{1}{2x}\right)$ $(x>0)$ の最小値を求めよ。


(2) $x>-1$ のとき,$x+\displaystyle\frac{2}{x+1}$ の最小値を求めよ。

(3) $x>0$ のとき,$\displaystyle\frac{x}{x^2+2}$ の最大値を求めよ。

(1) の解答

$\left(x+\displaystyle\frac{ 1 }{ x }\right)\left(2x+\displaystyle\frac{ 1 }{ 2x }\right)$

   $=2x^{2}+\displaystyle\frac{ 1 }{ 2x^{2} }+\displaystyle\frac{ 5 }{ 2 }$

$2x^{2}>0,\displaystyle\frac{1}{2x^{2}}>0$ であるから,

$(\text{相加平均})≧(\text{相乗平均})$より
$2x^{2}+\displaystyle\frac{ 1 }{ 2x^{2} }≧2\sqrt{ 2x^{2}\cdot\displaystyle\frac{ 1 }{ 2x^{2} } }$ $=2$

よって,
$2x^{2}+\displaystyle\frac{ 1 }{ 2x^{2} }+\displaystyle\frac{ 5 }{ 2 }≧2+\displaystyle\frac{ 5 }{ 2 }=\displaystyle\frac{ 9 }{ 2 }$

等号は $2x^{2}=\displaystyle\frac{ 1 }{ 2x^{2} }$ かつ $x>0$ すなわち $x=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}$ のとき成り立つ

よって,

$x=\displaystyle\frac{ 1 }{ \sqrt{ 2 } }$ のとき最小値 $\displaystyle\frac{ 9 }{ 2 }$ (答)

(1) の解説・考え方の根拠

まず展開する。

$2x^{2}+\displaystyle\frac{ 1 }{ 2x^{2} }$ ($○+\displaystyle\frac{ \text{定数} }{ ○ }$) が現れるので,$(\text{相加平均})≧(\text{相乗平均})$ を使う。

等号が成り立つのは $2x^{2}=\displaystyle\frac{ 1 }{ 2x^{2} }$ かつ $x>0$ のとき。

$$2x^{2}=\displaystyle\frac{ 1 }{ 2x^{2} }$$ $$x^{4}=\displaystyle\frac{ 1 }{ 4 }$$ $$x>0\text{ より }x=\displaystyle\frac{ 1 }{ \sqrt{ 2 } }$$
(注意)

$x+\displaystyle\frac{ 1 }{ x }$ と $2x+\displaystyle\frac{ 1 }{ 2x }$

それぞれに $(\text{相加平均})≧(\text{相乗平均})$を使えばいいのではと考えた人はいないだろうか。

$x+\displaystyle\frac{ 1 }{ x }≧2$
$2x+\displaystyle\frac{ 1 }{ 2x }≧2$

となるから,
$\left(x+\displaystyle\frac{ 1 }{ x }\right)\left(2x+\displaystyle\frac{ 1 }{ 2x }\right)≧4$

よって,最小値は $4$

一見,合ってそうな気もするが,これは大きな間違いである。(よく見る間違いでもある)
等号が成り立つ条件を確認してみると,

$x+\displaystyle\frac{ 1 }{ x }=2$ となるのは

$x=\displaystyle\frac{ 1 }{ x }$ すなわち $x=1$ のとき

$2x+\displaystyle\frac{ 1 }{ 2x }=2$ となるのは,

$2x=\displaystyle\frac{ 1 }{ 2x }$ すなわち $x=\displaystyle\frac{ 1 }{ 2 }$ のとき

よって,$\left(x+\displaystyle\frac{ 1 }{ x }\right)\left(2x+\displaystyle\frac{ 1 }{ 2x }\right)=4$ となるのは
$x=1$ かつ $x=\displaystyle\frac{ 1 }{ 2 }$ のとき
(同時に満たすことは不可能!)

結局,$\left(x+\displaystyle\frac{ 1 }{ x }\right)\left(2x+\displaystyle\frac{ 1 }{ 2x }\right)=4$ となる $x$ は存在しなかったということである。
こういう間違いを起こさないためにも,等号が成り立つ条件を確認することが大事なのである。

(2) の解答

$x+\displaystyle\frac{ 2 }{ x+1 }$ $(x>-1)$

$x+\displaystyle\frac{2}{x+1}=(x+1)+\displaystyle\frac{2}{x+1}-1$

$x+1>0,\displaystyle\frac{ 2 }{ x+1 }>0$ であるから,

$(\text{相加平均})≧(\text{相乗平均})$ より
$(x+1)+\displaystyle\frac{ 2 }{ x+1 }≧2\sqrt{ (x+1)\cdot\displaystyle\frac{ 2 }{ x+1 } }$$=2\sqrt{ 2 }$

よって,
$(x+1)+\displaystyle\frac{2}{x+1}-1≧2\sqrt{ 2 }-1$

等号は $x+1=\displaystyle\frac{ 2 }{ x+1 }$ かつ $x>-1$ すなわち $x=\sqrt{ 2 }-1$ のとき成り立つ

よって,
$x=\sqrt{ 2 }-1$ のとき最小値 $2\sqrt{ 2 }-1$ (答)

(2) の解説・考え方の根拠

$○+\displaystyle\frac{ \text{定数} }{ ○ }$ に近いのでこの形に変形し,$(\text{相加平均})≧(\text{相乗平均})$ を使うことを目指す。

$(x$$+1$$)+\displaystyle\frac{ 2 }{ x+1 }$ と無理やり書く。

$+1$」を勝手に入れたので,「$-1$」を入れて帳尻を合わせる。

(相加平均)>=(相乗平均)が使えるように変形

あとは,$x+1$ と $\displaystyle\frac{ 2 }{ x+1 }$$(\text{相加平均})≧(\text{相乗平均})$ を適用する。

等号が成り立つのは $x+1=\displaystyle\frac{ 2 }{ x+1 }$ かつ $x>-1$ のとき。

$$x+1=\displaystyle\frac{ 2 }{ x+1 }$$ $$(x+1)^{2}=2$$ $$x+1=\pm\sqrt{ 2 }$$ $$x=\pm\sqrt{ 2 }-1$$ $$x>-1\text{ より }x=\sqrt{ 2 }-1$$

(3) の解答

$\displaystyle\frac{x}{x^{2}+2}$ $(x>0)$ の最大値

$\displaystyle\frac{x}{x^{2}+2}=\displaystyle\frac{1}{x+\displaystyle\frac{2}{x}}$ [分母と分子を $x$ で割った]

$\displaystyle\frac{ 1 }{ x + \displaystyle\frac{ 2 }{ x }}$ が最大となるのは,$x + \displaystyle\frac{ 2 }{ x }$ が最小となるときである。

$x>0,\displaystyle\frac{ 2 }{ x }>0$ であるから,

$(\text{相加平均})≧(\text{相乗平均})$ より
$x+\displaystyle\frac{2}{x}≧2\sqrt{x\cdot\displaystyle\frac{2}{x}}$$=2\sqrt{ 2 }$

等号は $x=\displaystyle\frac{2}{x}$ かつ $x>0$ すなわち $x=\sqrt{ 2 }$ のとき成り立つ

よって,$x=\sqrt{ 2 }$ のとき最大値 $\displaystyle\frac{ 1 }{ 2\sqrt{ 2 } }$

(3) の解説・考え方の根拠

$(\text{相加平均})≧(\text{相乗平均})$ を使うために,$\displaystyle\frac{ x }{ x^{2} +2}$ の分母と分子を $x$ で割る」という選択肢がとれるかどうかがすべて。ちなみに,理系であれば数学Ⅲの微分法で求めることもできるが,時間が余計にかかる上に,計算量も増えミスの可能性が上がる。文系であれば,気づけなければ求めることが不可能。「こんなの思いつかない」は通用しない。この発想をするためには,最大最小問題を見たとき,基本方針 4 パターンを常に意識する必要がある。なんとなく解いていては思いつかなくて当然である。数学は「慣れ」が必要だが,ポイントを意識して考えることが早く慣れるためのコツである。

(話を戻して)

$\displaystyle\frac{ 1 }{ x + \displaystyle\frac{ 2 }{ x }}$ の形にできたら,分母が最小となるときを考えれば最大値が求まる。

$x + \displaystyle\frac{ 2 }{ x }$ の最小値は $2\sqrt{ 2 }$

よって $\displaystyle\frac{ 1 }{ x + \displaystyle\frac{ 2 }{ x }}$ の最大値は $\displaystyle\frac{ 1 }{ 2\sqrt{ 2 } }$

これで「解ける」へ!

$○+\displaystyle\frac{ \text{定数} }{ ○ }$ の最大値,最小値は $(\text{相加平均})≧(\text{相乗平均})$

「$○+\displaystyle\frac{ \text{定数} }{ ○ }$」の形が作れないか意識する!

 

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