ユークリッドの互除法の証明は
「以上 かつ 以下」
を証明せよ!
(最大公約数) $≧$ (公約数)
に着目!
ユークリッドの互除法とは
このページでは,$a$ と $b$ の最大公約数を $(a,b)$ と表します。
<ユークリッドの互除法(基本表現)>
自然数 $a$,$b$,$q$,$r$ が関係式
$a=bq+r$
を満たすとき,
$(a,b)=(b,r)$
(例)$966$ と $667$ の最大公約数
$966$ $=$ $667$ $\cdot$ $1$ $+$ $299$ より $(966,667)=(667,299)$
$667$ $=$ $299$ $\cdot$ $2$ $+$ $69$ より $(667,299)=(299,69)$
$299$ $=$ $69$ $\cdot$ $4$ $+$ $23$ より $(299,69)=(69,23)$
$69$ $=$ $23$ $\cdot$ $3$ $+$ $0$ より $(69,23)=(23,0)$
よって,
$(966,667)=(23,0)=23$
∴ $966$ と $667$ の最大公約数は $23$
$a$ を $b$ で割ったときの商を $q$,余りを $r$ として立式していく感じですね。
次のような表現もあるので押さえておきましょう。
<ユークリッドの互除法(別表現)>
自然数 $a$,$b$ について,$a≧b$ のとき
$(a,b)=(a-b,b)$
(例)$966$ と $667$ の最大公約数
$\begin{align} (966,667) &= (299,667) \\ &=(299,368) \\ &=(299,69) \\ &=(230,69) \\ &=(161,69) \\ &=(92,69) \\ &=(23,69) \\ &=(23,46) \\ &=(23,23) \\ &=(23,0) \\ &=23 \end{align}$
∴ $966$ と $667$ の最大公約数は $23$
繰り返し $(\text{大きい方})-(\text{小さい方})$ としていく感じですね。
別物に見えますが,$a=bq+r$ において $q=1$ (商を $1$)としただけのものです。
$q=1$ のとき $r=a-b$ となるので,
$a$ $=$ $b$ $\cdot$ $1$ $+$ $a-b$
これで基本表現のユークリッドの互除法を用いることで
$(a,b)=(b,a-b)$
が得られますね。入試ではこちらの表現もよく出てくるので,慌てなくても済むように押さえておきましょう。
ユークリッドの互除法の証明
ユークリッドの互除法(基本表現)の証明
$(a,b)=g_1$,$(b,r)=g_2$ とおいたとき,目標は
$g_1=g_2$
です。この「等しい」ことを証明するだけですが,ユークリッドの互除法の証明は特殊で,
$g_1≦g_2$ かつ $g_1≧g_2$
を示す方針で進めます。「以上 かつ 以下」を証明するんですね。これは知らないと無理です。
最大公約数を設定したときの扱いも知っておきましょう。(他の問題でも必要になります)
$2$ つの自然数 $a$,$b$ の最大公約数を $g$,最小公倍数を $l$ とするとき
[1] $a=a’g$,$b=b’g$ ($a’$ と $b’$ は互いに素な自然数) と表せて,
[2] $l=a’b’g$ が成り立つ
最大公約数や最小公倍数が絡んだときは,上記の式を立てるのが定石です。
$(a,b)=g_1$,$(b,r)=g_2$ とするとき,
$\begin{cases} a=a_{1} g_1 \\ b=b_1 g_1\end{cases}\cdots \text{ ①}$ ($a_1$,$b_1$ は互いに素な自然数)
$\begin{cases} b=b_2 g_2 \\ r=r_2 g_2 \end{cases}\cdots \text{ ②}$ ($b_2$,$r_2$ は互いに素な自然数)
と表せます。(今回は最小公倍数は関係ないので,これだけでOKです。[2] の式は不要。)
さて,どうやって
$g_1≧g_2$ かつ $g_1≦g_2$
を示すかですが,(最大公約数) $≧$ (公約数)という事実を利用します。ここから少しややこしくなるので気合を入れてください。
【$g_1≧g_2$ の証明】
まず $g_1$ は $a$ と $b$ の最大公約数です。
ということは,$g_2$ が $a$ と $b$ の公約数であることが言えれば,
(最大公約数) $≧$ (公約数)
より,
$g_1$ $≧$ $g_2$
ですね。ここまで大丈夫ですか?
よって,「$g_2$ が $a$ と $b$ の公約数(すなわち $g_2$ が $a$ の約数かつ $b$ の約数) 」であることを示せば良いのですが,$g_2$ は $b$ と $r$ の最大公約数なので,$g_2$ は $b$ の約数であることは言えていますね。
したがって,$g_2$ が $a$ の約数であることを示せばOKということになります。…ここまで大丈夫?
よって,
$a=g_2×\left(\text{整数}\right)$
が目標です。$g_2$ が顔を出す式は$$\begin{cases} b=b_2 g_2 \\ r=r_2 g_2 \end{cases}\cdots \text{ ②}$$なので,これと$$a=bq+r \space \cdots (\text{☆})$$を使って示します。
$\begin{align} a &= bq+r \space \cdots (\text{☆}) \\ &= b_2g_2+r_2g_2 \enspace \text{[②を代入]} \\ &= g_2(b_2+r_2) \\ &= g_2×(\text{整数}) \end{align}$
∴ $g_2$ は $a$ の約数
はい,これでいいですね。証明の書き方は解答を参考にしてもらうと良いですが,次のような流れになります。
流れ | コメント |
---|---|
$g_2$ が $a$ の約数であることを示す | ここをとにかく頑張る! |
$g_2$ は $b$ の約数でもあるので $a$ と $b$ の公約数 | $g_2$ は $b$ と $r$ の最大公約数より |
$g_1$ は $a$ と $b$ の最大公約数なので $g_1$ $≧$ $g_2$ | (最大公約数) $≧$ (公約数) |
あとは,同様にして $g_1≦g_2$ を示します。ほとんど同じですが,念のため流れを確認しておきます。
【$g_1≦g_2$ の証明】
まず $g_2$ は $b$ と $r$ の最大公約数。
よって,$g_1$ が $b$ と $r$ の公約数であることが言えれば,
(公約数) $≦$ (最大公約数)
より,
$g_1$ $≦$ $g_2$
よって,「$g_1$ が $b$ と $r$ の公約数(すなわち $g_1$ が $b$ の約数かつ $r$ の約数) 」であることを示せば良いが,$g_1$ は $a$ と $b$ の最大公約数なので,$g_1$ は $b$ の約数であることは言えている。
したがって,$g_1$ が $r$ の約数であることを示せばOK。よって,
$r=g_1×\left(\text{整数}\right)$
が目標。$g_1$ が顔を出す式は$$\begin{cases} a=a_{1} g_1 \\ b=b_1 g_1\end{cases}\cdots \text{ ①}$$なので,これと$$a=bq+r \space \cdots (\text{☆})$$を使って示す。
$\begin{align} a &= bq+r \space \cdots (\text{☆}) \\r &= a-bq \enspace \text{[移項]} \\ &= a_1g_1-b_1g_1q \enspace \text{[①を代入]} \\ &= g_1(a_1-b_1q) \\ &= g_1×(\text{整数}) \end{align}$
∴ $g_1$ は $r$ の約数
はい,できました!実際の証明の流れは,次のようになります。
流れ | コメント |
---|---|
$g_1$ が $r$ の約数であることを示す | ここをとにかく頑張る! |
$g_1$ は $b$ の約数でもあるので $b$ と $r$ の公約数 | $g_1$ は $a$ と $b$ の最大公約数より |
$g_2$ は $b$ と $r$ の最大公約数なので $g_1$ $≦$ $g_2$ | (公約数) $≦$ (最大公約数) |
ユークリッドの互除法(別表現)の証明
方針は基本表現の場合と同じです。計算は少し変わりますが,方針(流れ)は同じであることの理解が重要です。一度、自分の手で証明してみましょう。単に真似するのではなく,
・「以上 かつ 以下」を証明
・(最大公約数) $≧$ (公約数) を利用
この 2 つのことを意識して自分なりに答案を作りましょう。
入試においての扱い
ユークリッドの互除法の証明は大学入試でたびたび出題されます。経験がなければまず無理なので,定石として押さえておくのが良いでしょう。注意としては証明を「丸暗記」するのではなく,
・「以上 かつ 以下」を証明
・(最大公約数) $≧$ (公約数) を利用
という部分を定石として覚えておき,それ以外はその場で考えることです。証明の流れも変わることはないので,全体の流れも覚えてしまうのも良いでしょう。
ユークリッドの互除法は,さまざまな表現で出題されます。今回は頻出の 2 パターンを扱いましたが,設定を加えればいくらでも表現を変えることができます。これらすべてを「丸暗記」するわけにはいきませんが,今回の定石を覚えておけば必ず対応できます。今後の学習でユークリッドの互除法の証明をする場面があれば「定石をもとに答案を作り上げる」ことを意識すると良いでしょう。
まとめ
(参考)$(a,b)=g_1$,$(b,r)=g_2$ とするとき,$g_1$ $≧$ $g_2$ を示すときの流れ
流れ($g_1$ $≧$ $g_2$ の証明) | コメント |
---|---|
$g_2$ が $a$ の約数であることをなんとかして示す! | ここをとにかく頑張る! |
$g_2$ は $b$ の約数でもあるので $a$ と $b$ の公約数 | $g_2$ は $b$ と $r$ の最大公約数より |
$g_1$ は $a$ と $b$ の最大公約数なので $g_1$ $≧$ $g_2$ | (最大公約数) $≧$ (公約数) |