【入試問題】sinθ+cosθ=tとおくパターンと,直線のなす角に関する最大値,最小値

1変数の最大値,最小値は基本方針4パターン
[1] 2次関数なら平方完成してグラフ!
[2] $○+\displaystyle\frac{ \text{定数} }{ ○ }$ なら
  $(\text{相加平均})≧(\text{相乗平均})$

[3] $a\sin \theta+b\cos \theta$ なら合成!
[4] その他は微分して増減表!
を常に意識する!

問題(山口東京理科大)

関数y=2sin2θ+1-sinθ-cosθ(0≦θ≦π)について,次の問いに答えよ。
(1) t=sinθ+cosθとおくとき,tのとり得る値の範囲を求めよ。
(2) yの最大値と最小値を求めよ。
山口東京理科大学

(1) の解答

$t=\sin \theta+\cos \theta$ $=\sqrt{2}\sin \left(\theta+\displaystyle\frac{\pi}{4}\right)$ [合成]

$\displaystyle\frac{\pi}{4}≦\theta+\displaystyle\frac{\pi}{4}≦\displaystyle\frac{5}{4}\pi$ より

$-\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}$ $≦\sin \left(\theta+\displaystyle\frac{\pi}{4}\right)≦$ $1$

$-1≦\sqrt{2}\sin \left(\theta+\displaystyle\frac{\pi}{4}\right)≦\sqrt{2}$

よって $-1≦t≦\sqrt{2}$ (答)

π/4から(5π)/4のsinの範囲

(1) の解説・考え方の根拠

$a\sin \theta+b\cos \theta$ は合成!

$t$ の範囲は $a\sin \theta+b\cos \theta$ の形を見て合成してしまえばすぐ求まる。

「とり得る値の範囲」は,結局のところ最大値と最小値を聞かれているだけである。合成による最大値,最小値の求め方については以下の記事を参照。

(2) の解答

$y=\sin 2\theta+1-\sin \theta-\cos \theta$
 $=2$ $\sin \theta\cos \theta$ $+1-($$\sin \theta+\cos \theta$$)$

ここで,
$t^2=(\sin \theta+\cos \theta)^2=1+2\sin \theta\cos \theta$

よって $\sin \theta\cos \theta=\displaystyle\frac{t^2-1}{2}$

したがって,$y$ を $t$ で表すと

$y=2$ $\cdot$ $\displaystyle\frac{t^2-1}{2}$ $+1-$ $t$

整理して

$y=t^2-t$ $(-1≦t≦\sqrt{2})$
 [$t$ の2次関数]

$y=\left(t-\displaystyle\frac{t}{2}\right)^{2}-\displaystyle\frac{1}{4}$ $(-1≦t≦\sqrt{2})$
 [平方完成]

放物線のグラフと最大最小

グラフより

$\begin{cases}(t=-1 のとき)\text{ 最大値 }2\\ (t=\frac{1}{2} のとき)\text{ 最小値 }-\displaystyle\frac{1}{4} \end{cases}$ (答)

(2) の解説・考え方の根拠

$y$ を $t$ の関数で表してみると,$t$ の2次関数となる。

2次関数の最大値,最小値は平方完成してグラフから求める!

2次関数であることから,瞬時に平方完成という選択ができるようにしたい。2次関数の最大値,最小値の求め方については,以下の記事を参照。

最大値,最小値を求める基本方針4パターンが頭に入っていれば悩むことなく解けるはず。土台となる考え方を頭に入れておく重要性を理解してほしい。

 この問題から得て欲しいことはもう1つある。(改) を入れているが,本来は (1) が存在せず,いきなり $y$ の最大値と最小値が聞かれている。つまり,$t=\sin \theta+\cos \theta$ の置き換えを自分で思いつく必要がある。実際,誘導がない場合はかなり多いので,どういうときにこの置き換えをするのか確認しておく。式を見てみよう

$$y=\sin 2\theta+1-\sin \theta-\cos \theta$$

 慣れてきた場合は,この式の時点で気づけるが、ひとまず $\sin 2\theta$ に $2$ 倍角の公式を用いて,角を $\theta$ に統一する。(三角関数において,角の部分をそろえるのは基本方針である)

$$y=2\sin \theta \cos \theta+1-\sin \theta-\cos \theta$$

 この式は $\sin \theta$ と $\cos \theta$ を入れ替えて書いても変わらないことに気付くだろうか。実際に入れ替えてみると

$$y=2\cos \theta \sin \theta+1-\cos \theta-\sin \theta$$

 となるが,確かに同じ式である。このような式を対称式という。( 例えば $x^2+y^2$ や $x^3+xy+y^3$ は $x$ と $y$ の対称式である。)

 今回のような $\sin \theta$ と $\cos \theta$ の対称式は $t=\sin \theta+\cos \theta$ とおくということは知識として入れておく必要がある。当然,$t$ の範囲を求める必要が生じる。(合成)

これで「解ける」へ!①

$\sin \theta$ と $\cos \theta$ の対称式は $t=\sin \theta+\cos \theta$ とおく!

・合成により $t$ の範囲を求めよ

問題(北海道大)

xを正の実数とし,座標平面上に3点A(x,0),B(-2,2),C(-3,3)をとる。直線ABと直線ACのなす角をθとする。ただし,0<θ<π/2とする。
(1)tanθをxで表せ
(2)x>0におけるtanθの最大値およびそのときのxの値を求めよ。
北海道大学

(1) の解答

問題の図示

図のように,
直線 AB と $x$ 軸の正の向きになす角を $\beta$
直線 AC と $x$ 軸の正の向きになす角を $\gamma$

とすると,

直線 AB の傾きは $\displaystyle\frac{-2}{x+2}$ $[\displaystyle\frac{y\text{ の変化量}}{x\text{ の変化量}}]$

直線 AC の傾きは $\displaystyle\frac{-3}{x+3}$ $[\displaystyle\frac{y\text{ の変化量}}{x\text{ の変化量}}]$

より,

 $\tan \beta=\displaystyle\frac{-2}{x+2}$$\tan \gamma=\displaystyle\frac{-3}{x+3}$

[$\tan $ $=$ 傾き]

よって,$\theta=\beta-\gamma$ より,

$\tan \theta=\tan (\beta-\gamma)$

   $=\displaystyle\frac{\tan \beta-\tan \gamma}{1+\tan \beta\tan \gamma}$ [$\tan$ の加法定理]

   $=\displaystyle\frac{\frac{-2}{x+2}-\frac{-3}{x+3}}{1+\frac{-2}{x+2}\cdot\frac{-3}{x+3}}$

   [$\tan \beta=\frac{-2}{x+2}$$\tan \gamma=\frac{-3}{x+3}$]

   $=\displaystyle\frac{-2(x+3)+3(x+2)}{(x+2)(x+3)+6}$

   [分母分子に $(x+2)(x+3)$ かけた]

   $=\displaystyle\frac{x}{x^2+5x+12}$ (答)

(1) の解説・考え方の根拠

2 直線のなす角をテーマとした典型問題である。以下のことは知識として入れておきたい。
① 直線のなす角の問題は「$\tan = \text{傾き}$」を利用
2直線のなす角は「$\tan$ の加法定理」を利用

① については,以下のことを基本事項として押さえておくこと。
直線とx軸のなす角と傾き
2直線のなす角に関する問題は,間違いなくこれらを利用する。
迷わず直線と$x$ 軸とのなす角を文字でおいて,解き進められるようにしたい。

(2) の解答

$\tan \theta=\displaystyle\frac{x}{x^2+5x+12}$ $(x>0)$ より

$\tan \theta=\displaystyle\frac{1}{x+\displaystyle\frac{12}{x}+5}$ [分母分子を $x$ で割った]

よって,$\tan \theta$ が最大となるのは,
$x+\displaystyle\frac{12}{x}$$+5$ が最小となるときである。

$x>0$,$\displaystyle\frac{12}{x}>0$ であるから,

$(\text{相加平均})≧(\text{相乗平均})$ より
$x+\displaystyle\frac{12}{x}≧2\sqrt{x\cdot\displaystyle\frac{12}{x}}$ $=4\sqrt{3}$

よって $x+\displaystyle\frac{12}{x}+5≧4\sqrt{3}+5$

等号は $x=\displaystyle\frac{12}{x}$ すなわち $x=2\sqrt{3}$ のとき成り立つ

以上より,$\tan \theta$ は

$x=2\sqrt{3}$ のとき,

最大値 $\displaystyle\frac{1}{4\sqrt{3}+5}=\displaystyle\frac{4\sqrt{3}-5}{23}$ (答)

(2) の解説・考え方の根拠

$○+\displaystyle\frac{ \text{定数} }{ ○ }$ の最大値,最小値は$(\text{相加平均})≧(\text{相乗平均})$

 $\displaystyle\frac{x}{x^2+5x+12}$ $(x>0)$ の最大値を求める問題である。しつこく言うが,最大値,最小値を求める基本方針4パターンが頭に入っていることが前提である。分母と分子を $x$ で割れば $x+\displaystyle\frac{12}{x}$ $(○+\displaystyle\frac{ \text{定数} }{ ○ }\text{ の形})$ が現れるため,$(\text{相加平均})≧(\text{相乗平均})$ を用いる。相加平均・相乗平均による最大値,最小値の求め方については,以下の記事を参照。

$\displaystyle\frac{x}{x^2+5x+12}$ $(x>0)$

この式の最大値を求めるとき,次のような思考で解ければよい。

最大値,最小値(1変数)の問題なので,まず基本方針4パターンを思い浮かべる。
[1] 2次関数は平方完成
[2] $○+\displaystyle\frac{ \text{定数} }{ ○ }$ は$(\text{相加平均})≧(\text{相乗平均})$
[3] $a\sin \theta+b\cos \theta$ なら合成
[4] 上記が無理なら微分


[1]と[3]は明らかに違うため除外。[2]と[4]が候補となる。[4]は他がすべて無理な場合に選択するので,[2]の方針で解けないか検討する。

つまり,「$○+\displaystyle\frac{ \text{定数} }{ ○ }$ の形を作ることができないだろうか」という視点で $\displaystyle\frac{x}{x^2+5x+12}$ を見るのである。

この視点で見ることによって,分母と分子を $x$ で割って $x+\displaystyle\frac{12}{x}$ に着目するという発想ができるのである。

ちなみに,理系(数学Ⅲ学習済み)であれば[4]の微分によって解くことも可能である。文系の場合は,[2]の方針で解くことに気付けなければ解くことができない。

これで「解ける」へ!②

直線のなす角は「$\tan=\text{傾き}$」に着目せよ!

2 直線のなす角は「$\tan $ の加法定理」に着目せよ!

 

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