$α=\left(\text{有名角でない角}\right)$ は
有名角となるようにかけて
分割せよ!
今回は有名角でない角,特に $\displaystyle\frac{π}{10}\left(=18°\right)$,$\displaystyle\frac{π}{5}\left(=36°\right)$,$\displaystyle\frac{π}{7}\left(≒25.714°\right)$ が出てきたときの定石について説明します。
例題 有名角でない角の扱い方「$\cos \displaystyle\frac{π}{5}$ の値」
$\enspace α=\displaystyle\frac{π}{5}$ のとき,$\cos α$ の値を求めよ。
$α=\displaystyle\frac{π}{5}$
これは有名角ではありませんね。こういうときはとにかく有名角となるように自然数をかけましょう。ここで言う有名角とは,三角比の値が分かる角$\left(0,\displaystyle\frac{π}{6},\displaystyle\frac{π}{4},\displaystyle\frac{π}{3},\displaystyle\frac{π}{2},\cdots \right)$ のことです。このとき,有名角となるような「最小の」自然数をかけることに注意です。まあ,言われなくてもそうすると思いますが。
今回は $5$ 倍ですね
$5α=π$
そして,このあとが少し特殊で,この $5α$ を分割します。分割するというのは $4α+α$ とか $3α+2α$ などに分けるという意味です。どう分割するかは状況によりますが,基本的には「最も均等」な分け方が成功する可能性が高いです。今回は $3α+2α$ ですね。
$3α+2α$ $=π$
分割した一方を移項します。(今回は $2α$ を移項してみます)
$3α=π-2α$
そして,$\sin$ か $\cos$ をかぶせる。ここまでが定石です。
$\begin{align} \cos 3α &= \cos(π-2α) \\ \cos 3α &= -\cos2α \end{align}$
もしくは
$\begin{align} \sin 3α &= \sin(π-2α) \\ \sin 3α &= \sin2α \end{align}$
$\sin$ か $\cos$どちらをかぶせるかはケースバイケースなので,うまくいきそうな方から試しましょう。今回は $\cos α$ の値を求めたいから,$\cos$ をかぶせるのが自然でしょうか。(解答)
実は $\sin$ をかぶせた方が簡単です。(別解)
この一連の流れは定石として覚えておきましょう。
練習問題 「$\sin \displaystyle\frac{π}{10}$ の値」
$\enspace$次の □ にあてはまる数値を記せ.
$\enspace$ $5α=\displaystyle\frac{π}{2}$ のとき,
$\sin 2α=\cos^ア□α$
であるから,
$2\sin α \cos α =^イ□\cos^3 α-^ウ□\cos α$
$\enspace$$\cos α≠0,\cos^2 α=1-\sin^2 α$ であるから,
$4\sin^2 α+^エ□\sin α-^オ□=0$
$\enspace$$0<\sin α<1$ であるから,これを解くと,
$\sin α=\displaystyle\frac{-1+\sqrt{^カ□}}{4}$
を得る.
【滋賀医科大学】
$α=\displaystyle\frac{π}{10}$
が与えられてるときの話ですね。例題とほぼ同じ流れです。
入試における位置付け
やや特殊な設定ではありますが,入試では意外とよく見る設定です。例題や練習問題のような問題が出る場合もありますが、中堅以上のレベルの大学入試になると,「複素数と方程式」との融合問題が多いですね。さらに上位になれば整数など様々な分野と融合されます。
どの分野との融合問題だとしても,今回の定石で考えることがスタートとなります。よって,今回の話は,これらの融合問題のスタートの部分として認識しておくと良いでしょう。このスタートラインに立てるかどうかが差がつくところです。実際の問題については別の記事で扱います。ここで話しておきたいのですが,様々な定石を含み,ここで扱うと脱線気味になるので…。